父母の会発足への思い

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父母の会発足への思い

父母の会発足への思い

児童の福祉は国の基であると言われます。わが国に児童福祉法および教育基本法が制定されてからすでに十余年が経過し、その間児童の福祉並びに教育については大きな進歩が見られました。しかしながら肢体不自由児に対する問題は、その対策がとりあげられてから日が浅く、かつその実態の複雑さのため、現在においてもその大部分が国や地方自治体の施策の対象外に放置されています。これらの子供たちの中には、肢体不自由と精神薄弱という二重の障害を負い、家族と共に明日への希望を全く見出だせず苦しんでいるものが多数おります。

 しかし、こうした子供たちでさえも、もし適切な治療と教育を受けることができるならば、いくらかでも将来への光明を見出だせるはずであり、まして、より軽度の子供たちにおいては将来立派に自立し、社会に貢献し得ることは明らかであります。

しかるに現在では、この子供たちはややもすれば、細い手、曲がった足に好奇心を注ぐ心ない世間の目に追われて家庭に閉じこもり、社会から遠ざかりがちなことは誠に残念であります。こうした子供たちを放置することによって、双葉を枯らす結果に終わらせることは、国家社会のため大きな不幸なことと申さねばなりません。

 ひとりの母の嘆きは小さくとも、百人、千人の手をつなぐ母親の訴えは世論を動かすことも可能です。私たちわが子の将来を思い悩む父母は、ここに互いに手をつなぎ合って社会にその実情を訴え、肢体不自由児に治療と教育或いは職場が与えられるよう当局の施策を促すため、ここに肢体不自由児者父母の会を結成し、子供たちの福祉増進のため努力したいと考えます。

昭和33年3月27日

「註」 文中に使われている「精神薄弱」の用語は、法律改正により平成11年4月より「知的発達障害」または「知的障害」と改められました。

「註」 肢体不自由児者父母の会の結成時から長い年月の経過があり、社会の変化・障害児観の変化により、現在の肢体不自由児者父母の会の実情とは異なりますが、板橋区肢体不自由児者父母の会の活動の原点として掲載いたします。